1 / 4ページ
本記事の前編では、コロナ禍においても厄祓いの巡行を続ける伊勢大神楽の動向を紹介した。後編では伊勢大神楽と地域の祭礼との関係性や、コロナ禍で浮かび上がった彼らの活動の特殊性について俯瞰的に記す。
開催された/されなかった祭りの傾向
少々俯瞰して、伊勢大神楽以外の民俗行事についても考えてみたい。西日本には祇園祭をはじめとする都市祭礼が多く見られ、観光化された大規模なものもあるが、2020年はそのほとんどが中止もしくは神事のみに縮小された。とくに山車・鉾・だんじり・太鼓台などの巡行や、芸能の奉納などは、多くの担い手や関係者、観光客などが集まるため、まず先に中止が決められた。神社が中心になっている祭りは、神社庁からの自粛要請を理由に掲げて中止を決めたところも多いと聞く。
一方、よく話を聞いていくと、地域住民だけで行う小規模行事は行われたところも少なくないようである。2021年正月に入ってから滋賀県で聞いたところによると、村の境や神社入口に勧請縄とよばれる縄をかける行事や、左義長(とんど焼き)といって旧年の御札や正月飾りなどを焼く行事は、例年通り行ったという地域が多かった。私が住んでいる大阪府茨木市の各地区の神社でも、左義長が行われていることが確認できた。これらの行事の傾向を見ると、地域住民以外はほとんど関わらない小規模の行事であること、芸能や飲食を伴わずとも実施が可能であること、身近で実用的な目的のある行事であることなどの特徴が挙げられる。開催判断には、ウイルスが猛威をふるう時期や政府対応とのタイミングもあるだろう。年末年始はちょうど政府のコロナ対応の端境期だったこともあって、実施できた行事もあったが、春祭りは緊急事態宣言、秋祭りは感染者数のリバウンドが見られたタイミングと重なっていたことが中止につながったと考えられる。

非公開で短い奉納が行われた、三重県桑名市太夫増田神社、
2020年12月(筆者撮影)