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各地の祭りと伊勢大神楽の関係性
このような地域の祭りと、地域外からやってくる専業の芸能集団である伊勢大神楽は無縁であると考える人もいるかもしれないが、実は伊勢大神楽が行く日と地域の祭礼や年中行事が重なっている場合も多いのである。
とくに秋には、各地で伊勢大神楽の回檀日程と地域の祭りが重なる姿が見られる。山本源太夫組は9月から12月にかけて大阪南部の河内を廻るが、だんじりの巡行と同じ日に獅子舞が廻ることがある。多くの地区ではもともと定められた日に例大祭が行われており、その日に合わせて大神楽が回檀する地区がいくつもあったが、近年は祭りが土日開催に変更されたことで、大神楽の回檀と必ずしも重ならなくなった。2020年は偶然にも、羽曳野市の古市で神楽が廻る日が土日にあたったため、本来ならばだんじりと獅子舞がすれ違う姿を見ることができる珍しい年だった。しかし多分に漏れず、古市のだんじり巡行も全面的に中止された。当地の白鳥神社の掲示板には、「だんじり、伊勢大神楽総舞、露天商出店中止」と貼り紙が掲げられていた。また、商店街の各店にはだんじりの青年会が配布した「今年は我慢、来年自慢」というポスターが貼られ、断腸の思いで中止を決定したであろう祭り人たちの悔しさが伝わってきた。伊勢大神楽はというと、神社での総舞は中止になったが、家での回檀は滞りなく行われた。「今年は我慢」のポスターの前で獅子が舞う姿を、全ての人が良いと思わなかったかもしれない。しかし町では主に、「だんじりも祭りもなくて、楽しみが一つもなくなったのに、神楽も来なかったらどうしようかと思った、来てくれて本当に良かった」といって喜ぶ住民の声が聞かれた。