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筆者は、現地での史料調査と研究指導を得ることを目的として、2020年11月からトルコ共和国イスタンブルに滞在しており、留学開始から新型コロナウイルスの感染拡大の影響を多分に受けることとなった。本稿では、イスタンブル滞在を通して目の当たりにしているコロナ下のイスタンブルとそこでの生活の一端を紹介したい。
はじめに
筆者は、18世紀イスタンブルの船着場における社会経済構造分析をテーマに、そこで活動する同業組合の研究を行っている。このため、主にイスタンブルの文書館で閲覧可能な史料にアクセスすることを目的として、2020年11月より2年間の予定でトルコ共和国イスタンブルのボアジチ大学に留学している。もともとは2020年の夏に渡航するという予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大を受けてトルコが一時ビザの発給を停止したことなどを受けて大幅に遅延した。渡航後も外出禁止令や、大学のリモート化、図書館の利用制限などの影響を受け、留学以前に予定していた研究計画に大幅な変更を加える必要があると現在は考えている。
コロナ下のトルコ
トルコでは、2020年3月に公式に感染者が確認されると、65歳以上の人々に対する外出禁止令が出された。感染が拡大するにつれて適応範囲は拡大されていった。夏になると一度外出禁止令は取り下げられたものの、新規感染者数の増加のために11月20日より再び午後9時から午前5時までの外出禁止令と飲食店の店内営業禁止が発令された。さらにその2週間後には週末の外出が禁止された。この間にはトルコ政府の発表する新規感染者数には無症状患者が含まれていないことが発表され、大きな波紋を呼ぶ事態も発生した。外出禁止令は新規感染者数の変遷とともに緩和と規制が繰り返されており、2021年4月現在はトルコ全土で平日の午後7時―午前5時及び週末の外出が禁止されている状況にある。