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コロナ状況下のモンゴル:首都ウランバートルでの一年

2021.03.25

著者:滝口 良(JICA専門家/モンゴル日本人材開発センター、文化人類学)

アジア 文化人類学

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中国に隣接するモンゴルでは国境閉鎖をはじめ迅速かつ厳格な対応により世界的感染の初期フェーズにおける防疫に成功した。平和な夏が訪れ、こうして毎日が続いていくと思われていたある日、事態は急変する。

オンラインで迎える旧正月
スマートフォンの画面越しに、伝統衣装に身を包んだ家族と机の上に並ぶ食事が映し出されている。新年の挨拶を交わすために家族の面々が代わる代わるスマートフォンを手に取り、お祝いのお金をオンライン決済で振り込む。モンゴル・ウランバートルでのロックダウン下で迎えた2021年の旧正月の光景だ。本来であれば親戚知人の家庭を互いに訪問して賀詞交換を行い、食事を共にするのがモンゴルの旧正月である。新型コロナウイルスへの防疫対策として、モンゴル政府は2021年の旧正月(2月12日~14日)の前後に12日間の全国警戒体制(いわゆる「ロックダウン」)への移行を決定し、賀詞交換のための家庭訪問を控え、オンラインで祝うよう市民に呼びかけた。こうしてモンゴル最大の伝統行事である旧正月はロックダウンの状況下で「オンライン」で行われることになったのである。

本稿を執筆している2021年2月の時点で、新型コロナウイルスの世界的拡大からおよそ1年が経過している。中国に国境を接する人口およそ330万人の国モンゴルは、中国国境の閉鎖をはじめとした迅速な対応により、新型コロナウイルスの世界的拡大の初期段階での抑え込みに成功した。しかし、2020年末になって生じた市中感染への対応には苦しみ、現在モンゴルは新たな対策のステージに移行しつつある。筆者は2017年から2021年2月現在までJICA専門家としてモンゴル首都ウランバートルで勤務しており、本稿ではコロナ状況下のウランバートルにおいて1年のあいだ生活した経験をもとに事態の推移を追いつつ、筆者にとり特徴的と思われるいくつかの事柄を取り上げたい。

例年の旧正月の様子。
賀詞交換に訪れる親戚や知人を料理で迎える(2016年2月筆者撮影)

新型コロナウイルスへのモンゴルの初期対応
モンゴル政府は新型コロナウイルスに対してきわめて迅速な対応を見せた。2020年1月26日、国内において感染者がまだ確認されていない段階で、モンゴル政府は3月2日まで全ての教育機関を休校することを決定する。2月になると、マスク着用の義務化が進められた。モンゴルではマスク着用の習慣はあまりなかったが、その後は市民のあいだでマスクの習慣が急速に定着している。またモンゴル政府は、水際対策として中国との国境封鎖につづいて国際航空便の各路線を停止、2月28日には成田-ウランバートル定期便が停止となっている。国際航空便の全路線の停止後は、自国民救済のためのチャーター便が不定期に運行されるのみとなった。この措置はおよそ1年が経過した現在も続いている。

列車内でのマスク着用を呼びかけるポスター(2020年9月筆者撮影)
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