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人口1149万のベルギーでは2021年2月までに2万人以上がパンデミック下で亡くなったと発表されている。2020年12月末からワクチン接種が始まったものの、同年秋からの様々な規制は2021年2月現在に至るまで継続され、人々の我慢も限界に近づいている。この記事では、コロナ禍のベルギー・フランス語圏における一日本人学生の生活について振り返っていきたい。
はじめに
まず筆者のプロフィールと留学先について簡単に述べておく。筆者は2019年秋から、ベルギーのフランス語圏にあるリエージュ大学の博士課程に在籍している。専門は中東中世史研究である。
ベルギーといえば、チョコレートやワッフルを思い浮かべる方が多いのではないだろうか。美食の国ベルギーには、フランス語・フラマン語・ドイツ語という3つの公用語があり、筆者が留学しているリエージュはフランス語圏の中心的な都市の一つである。人口20万ほどのこの街は人が親切で、道を教えてもらったり、重いスーツケースを運んでいたところ声をかけてもらったりといった経験は数えきれない。
ベルギーは日本の九州より少し小さいぐらいの面積の国だが、2021年2月までに人口1149万のうち2万人を超える人がパンデミックで犠牲になった。この記事では、昨年の感染拡大初期から現在までの状況を概観する。
パンデミックの始まりと差別の嵐
これは大事になるかもしれないと初めて思ったのは、2020年2月上旬。フランスやベルギーのメディアで、横浜のダイヤモンド・プリンセス号に関する報道を毎日のように見かけるようになった。当時のベルギーでは最初の感染症例が確認されたばかりで、「我々は関係ない」という雰囲気だった。
しかし2月末にイタリアで感染拡大が始まると、東アジア系の外見をした人への差別が深刻化した。道端ですれ違う人が鼻をつまむ、マフラーで口を覆う、若者の集団が咳のまねをして「コロナ」とはやし立てる、睨みつけられ唾を吐かれる、スーパーで指をさされて噂されるなど数々の差別に遭った。このころは、自分が感染するかもしれないという不安よりも差別感情を持った人に何をされるか分からないという恐怖の方が勝っていた。