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11月21日時点でのトルコ全土における公式の新規感染者数は5,500人ほどであったが、数日すると無症状患者の感染者数も反映されるようになり、1日あたりの新規感染者数は3万人ほどに爆発的に増加した。その後12月まで新規感染者数は継続して増加し、12月8日には最大の33,198人となった。外出禁止令の効果もあり、この日を境に新規感染者数は減少傾向に転じ、翌年の1月後半には1日あたり5-6,000人にまで減じた。3月になると政府は土曜日の外出禁止令と飲食店の店内営業を解禁したが、人の移動が増加したことで4月現在では新規感染者数が最大であった12月を超えて1日あたり50,000人以上を記録し続けている。
さらに追い討ちをかけるのが、ここ数年トルコを苛み続けているリラ価格の下落である。筆者が学部時代に留学していた2013-2014年のリラ―円のレートは、1リラ50円前後であったが、今回渡航した2020年11月後半には約11円、その後やや回復し約15円のレートで推移していた。ここ数年の継続的なリラの下落はトルコにおける物価上昇を生み出し、6年前と比べるといずれの物品も額面で価格が2~3倍に上昇した。外貨収入のある外国人という立場にある筆者には、全体的に以前よりも少々安くなったと感じられるが、特に食料品価格や家賃の継続的な値上げは着実にトルコ国民の生活を圧迫し続けている。そこに発生した新型コロナウイルス流行は多数の商工業者や労働者の経済状況をさらに悪化させ、かなりの不満が人々には溜まっていたと言われている。こうした不満と経済的影響を考慮したトルコ政府は3月に入ると土曜日の外出禁止令解除及び、学校での対面授業の一部解禁、飲食店の店内営業を通常の5割の稼働率で認めることを決定した。
しかしながら、3月20日に女性の権利を保障するイスタンブル条約からの脱退とトルコ中央銀行総裁の解任を決定したことで、週明けにはリラ価格が再び下落する結果となり、トルコの通貨安状態は今しばらく継続しそうな状況である。現在トルコでは誰と話しても、政治スタンスにかかわらずほぼ確実と言っていいほどリラ安とトルコの経済状況に関する話題が出る。学部時代から付き合いのあった友人は殆どがトルコ国外で就職してしまい、いまだトルコに残る友人もかなりの数が就職や留学などの方法で海外に転出することを模索している。今のところは新型コロナウイルス感染拡大を受けていずれも難航しているようであるが、新型コロナウイルス感染の終息後に若者の海外への流出が加速するのではないかと考えられる。
コロナ下でのイスタンブルの生活
筆者が今回渡航して驚かされたのは、宅配サービスの充実ぶりである。以前からフードデリバリーは利用されていたものの、新型コロナウイルス感染拡大とそれに伴う外出禁止令を契機に爆発的に広がったようで、現在の宅配サービスの充実ぶりには目を見張るものがある。これらのサービスに用いられるスマートフォンアプリケーションは、レストランからの料理のみならず、日用品や食品の宅配にも対応しており、人通りが減る夜8時以降になると通りを行き交うのはほとんどが宅配業者のバイクとなることからもその利用率の高さがうかがえる。