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中国滞在中の自粛生活から見えた新型コロナウィルス禍における人々の主体性

2020.07.10

著者:伊藤 悟 (国立民族学博物館、文化人類学、民族音楽学)

アジア 文化人類学民族音楽学

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私は2019年11月より翌年2月末まで中国雲南省のある自治州に滞在していた。渡航目的は少数民族タイ族の声と文字の文化、そして織物など民間工芸に関する研究交流だった。面積が秋田県ほどのこの州でも1月末から5名の感染者が確認されて厳戒態勢がしかれた。

はじめに
私は2019年11月より翌年2月末まで中国雲南省のある自治州に滞在していた。渡航目的は少数民族タイ族の声と文字の文化、そして織物など民間工芸に関する研究交流だった。面積が秋田県ほどのこの州でも1月末から5名の感染者が確認されて厳戒態勢がしかれた。私は帰国までの1か月間、外出自粛を余儀なくされた。このエッセーでは、私が目の当たりにした現地の移動規制や、人々の主体性、そして災禍における文化のあり方について記したい。

背景
WeChat(微信)という中国版SNSを見ると、私の友人のつながりのなかでは、2019年12月下旬には感染力の強い病気が流行しているという噂が飛び交っていた。やがて1月に入り国内メディアでも情報が解禁され、一斉に武漢を中心に新型肺炎が流行していることが報道されるようになり、全国各地の感染者・疑似症患者・濃厚接触者・検査結果待ちなどの詳細な統計が刻々と発表されるようになった。テレビでは、国内外の記者の質疑応答を含めた公式会見が毎日中継され、そのほかに武漢の医療が崩壊を起こしているニュースや、院内感染に苦しみながら必死に治療に当たる医師たちの様子まで赤裸々に報道された。また、ウィルス流行を警告した武漢の医師たちが12月に不当逮捕されていた事件と、隠ぺいをはかった地元政府役人たちの処罰も報道された。

雲南省における新型コロナウィルスの感染者数は185名確認された(2020年6月現時点)。1月23日、中央政府は武漢の都市封鎖を宣言したが、私が滞在していた地域はまだ1月25日に迎える春節の準備に活気づいていた。しかし、24日午後に州内でも感染者が確認されたという噂が流れ、緊張感が高まった。夜には地元政府がSNSやテレビを通じて感染者に関する情報公開に踏み切った。報道では、1月20日に武漢から車を運転して22日に入境した旅行者2名が23日に体調不良を訴えて入院し、新型コロナウィルスの感染を確認したとあった。その数日後には、1月17日にマレーシア旅行から帰国した女性が22日に入院、26日に感染が確定され、その家族2名も29日に陽性反応が検出されたと発表された。感染者の滞在先や居住地域は封鎖され、濃厚接触者は隔離されたという。

雲南省西部のタイ族村落の景観(2019年12⽉29⽇伊藤悟撮影)
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