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我慢できないイギリス人―そして二度目のロックダウンへ……
厳格なロックダウンは春から初夏にかけて続いたが、筆者が痛感したことが一つある。イギリスの人々は我慢をしない、ということだ(一般化しすぎかもしれないが)。5月~6月はイギリスでは貴重な好天が続くシーズンだが、筆者が自宅の窓から見ていると、近所の人々が友人と集って庭でバーベキューなどを楽しむ光景が目に入った(その頃は一部の例外を除き、世帯の異なる人々が集うのは禁じられていた)。日本ならば、こうした非常時には「自粛」の意識が強く働くだろう。それが良いのか悪いのかは別だが、感染抑制には一定の効果があろう。一方、イギリスでは自粛意識はあまりない。スペインのリゾート地でイギリス人滞在者が規制を無視してプールで泳ぎ拘束される姿が報じられた際にも、その映像への反応は批判よりもむしろ「良くやった」という喝采であった。
ロックダウン緩和の中で夏を過ごしたイギリスだが、秋に入って第二波の拡大を抑えられず、2020年11月5日から二度目のロックダウンに突入した。それに先駆け10月半ばから既に屋内での別世帯の人々の同席が禁じられていたが、筆者が目にした限り、そうした決まりごとは必ずしも守られてはいなかった。状況は一言で表すことができる。人々はもう、コロナによる規制に「飽きている」のだ。一度目には事態を注視し慎重に行動した人々も、事が長引くにつれそうした気持ちを無くしつつある。二度目のロックダウン前夜の11月4日には、多くの人々が最後の機会にと外食や飲みに出掛け、最近で最も多い人出になったことが報じられた。
筆者が本稿を書き上げる今日は、二度目のロックダウン初日の11月5日である。今回は教育機関が除外されたため大学図書館の使用は続けられるが、もし事態が悪化すればどうなるか(ちなみに、大英図書館は再閉鎖となった)。イギリスの冬は寒く、長く、気が滅入る。この国は第二波をどうやって乗り切るのだろうか。人々は既にロックダウンに飽きている。クリスマスまでに、この状況は好転するか。その上この国には、年末に迫った最終的なEU離脱交渉問題もある。色々な意味で先が見えないまま、イギリスの秋は更けていく。