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ロックダウン下の社会② 現状への順応
コロナ禍当初はスーパーの品薄が顕著だったが、4月に入った頃には次第に物流が元に戻り、買い物に困ることはなくなった。アマゾンなどでの買い物もできたし、レストランの一部もテイクアウトやデリバリーでの営業をしていたため、食や生活物資に困ることはなかった。
また印象的だったこととして、各サービスや大学の授業のオンライン化が非常に速やかに行われた点があげられる。筆者が目の当たりにしたSOASの状況で言えば、オンラインへの移行は至極唐突に通達され、大学は最初きちんとしたプラットフォームを提供するどころではなかった。教員それぞれがツールを調べ、オンライン化を実現したのである。現状に応じて「なんとかする」という人々の柔軟な対応力が、様々な局面で痛感された。
研究生活への影響
ロックダウンが研究に及ぼした影響についても述べておこう。言うまでもなく、その影響は深刻である。文献ベースの研究を行う筆者は、図書館を使えなければ出来ることが限られる。大学閉鎖前に借り出した史料をもとに自宅に篭って博論執筆を続けたが、借りられなかった史料も多かった。筆者のみならず、博士課程の学生の多くが研究を制限され、留学生仲間の中には春に故国に戻って以降、英国のコロナ禍と研究環境の悪化を理由に未だ大学に戻ってきていない人も多い。
7月になるとロックダウンが少しずつ緩和され、大学図書館は依然として立ち入りはできないものの、事前予約による貸出やスキャンデータの送信サービスを提供するようになった。7月22日には大英図書館が漸次的再稼働を始め、研究環境が少し良くなった。しかし、所属先であるSOASの図書館への立ち入りが出来たのは9月後半、じつに半年ぶりのことである。
殆どの図書館に共通して言えるが、以前と大きく違うのは、完全予約制で3時間などの時間制限がつくことだ。全てのスペースを開放しているわけではない上ソーシャルディスタンスを保つため人数が厳しく制限されており、予約はすぐに埋まってしまう。書籍の利用法も変化した。各図書館によってルールは異なるが、SOASは本来開架式図書館であったのが今は感染防止のため、館内に入れても書籍に触れることは原則禁じられている(一部開放された書架もあるが)。触ることができるのは事前予約をして職員により準備された本のみであり、冊数制限もある。自由に書架の間を歩き回って必要な情報を探すという、以前は当たり前に出来たことが、今は出来ない。また、一度誰かが触った本は3日間隔離されるため、見たい時に見たいものが見られない場合も多い。
……などと不便さをあげればキリがないが、状況を注視しながら出来る限りのサポートをしてくださる図書館職員の方々には頭が下がるばかりだ。今は一日も早く日常が戻ることを願いつつ、出来ることをするしかないだろう。