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移動規制の緩和における政府の建前上の理由は、経済再建の必要性であったが、実際には、今年の5月にラマダン(断食月)、とそれに続くイード(祝日)が重なった事も影響したと考えられる。モスクでの礼拝を求める声が高まったうえ、イード休暇での故郷への帰省や、恒例となっているイード前の服やカバン、靴などの買い物を楽しみにする様子もみられた。人々の間でこうした<気持ちの緩み>ともいえるものが出始めており、それを政府が抑え込みきれなくなったことが大きな要因となったのではないだろうか。移動規制の緩和後も礼拝や帰省といった人びとの移動を、警察や軍が検問し、県外からの流入者がいないか見張っているが、マスコミは、それでも多くの動きを止めることはできないとコメントをしていた。また、市井の人々の間で「感染するリスクだけでなく、感染させるリスクも恐れるべきであること」「無症状でも感染している場合がある」といった新型コロナに関する科学的根拠に基づいた知識が共有されていない点も、移動が減らない理由といえるであろう。
5.規制緩和の6・7月
5月からロックダウンは名ばかりで、街中の活気は6月になると戻っているかのように見えた。6月より感染者数に基づいて赤・黄・緑にゾーン分けし、規制の度合を変えたロックダウンが開始されているが、完全なものではなく、赤ゾーンでも自由な移動が可能な状況が2020年7月現在に至っても続いている。長距離移動の制限もなく、飛行機、電車、バスのすべてが運行している。しかし、長距離バスに関しては制限がかかっており、普段の2分の1の定員での運行が定められており、料金が通常の2倍となっている。市バスに関しては、バス会社ごとに対応は異なるが乗客がバスに乗り込む際に、乗務員が消毒液を乗客の手に散布している様子が見受けられる。
人びとの生活に関しては、銀行やショッピングモール、空港では入り口での検温や消毒が徹底されているものの、街中で見かける人びとのマスクの着用率などはどんどん減ってきていることが感じ取れる。レストランや商店等は基本的に営業再開が認められているが、営業時間を短縮している店舗が多い。