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4.縫製工場が再開し始めた5月
強硬なロックダウンの続行が困難な状況が、町中のいたるところで見受けられるようになった。
ダッカ・チッタゴンの都市部貧困層の88%が、COVID-19の影響で無収入に陥った(Dhaka Tribune, https://www.dhakatribune.com/health/coronavirus/2020/05/19/survey-88-of-extreme-urban-poor-in-dhaka-chittagong-now-without-income-amid-covid-19, 2020年5月20日閲覧)。縫製業が盛んなバングラデシュにおいては、工場閉鎖による打撃が大きく、「コロナで死ぬか 飢えで死ぬのか」の状況に立たされた低賃金労働者が、工場に集まり、未払い分の賃金の支払いや工場再開を求めてデモを起こすようになった。ロックダウン開始後も(こっそりと) 稼働していた工場もあるが、近隣住民からの批判の声や県知事等からの禁止の命令を受けて、一時は大多数の工場が停止した。このような状況を鑑みて、バングラデシュの衣料品業界団体 the Bangladesh Garment Manufacturers and Exporters Association (BGMEA) が「経済活動継続のためには縫製工場の再稼働が必要である」との意見表明を4月24日にした。そのことによって、工場が再開するといううわさを聞いて、ロックダウン開始以前に地方へ戻った労働者らが、ダッカ・チッタゴンに殺到。中には、徒歩で帰ってきた人も見られた。政府もこれ以上縫製工場を停止することは困難だと考え、条件付きでの再開を認める。BGMEAは、4月22日にGuideline for factory opening by BGMEA(バングラデシュの衣料品業界団体による縫製工場再開のためのガイドライン)を作成し、再開にあたっての注意点を工場主に提示。4月末から5月上旬にかけて工場が次々に再稼働する運びとなった。近所のスラムで暮らす工場勤務をしている女性との会話のなかでは、「コロナは怖いけど、それ以上にもうお金もないし食べ物もない。工場を再開してくれないと困る」、「給料はきちんと支払われるのか、未払いが続くと生活ができない」とのコメントが出始めた。4月頃の、外出は感染の危険性があるから怖いといった意識とは異なり、日々の生活の苦しさをどうにかしたいという感情が強くなっていることが分かった。
工場が再稼動され始めてからは、それまで車の往来が少なくなっていた道路に車が増え始め、ロックダウンの終了が政府から告げられる前に市バスまでもが運行を再開する運びとなった。