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その後も問答が続いたあと、私はとりあえず証拠になるものを、と思って持っていたスマホで彼らのビデオを撮影しはじめた。すると、青年もスマホを取り出し、写真を撮る仕草をした。それを見て私は「やめなさいよ」と言って止めたが、青年は「お前が先に撮ったんだろ。だから俺も撮ってんだよ。」と応戦。私がビデオを撮るのをやめて、青年に、「スマホ出して、さっきのビデオ消しな」と言うと、青年は「俺はそこまで恥知らずじゃない。本当はビデオを撮ってない」と言って、写真フォルダを開いて見せてくれた。
彼らと話していても埒が明かない、と思った私は「あんたたちの親に会わせて。いまから家に行こう。」と言って、青年の家に向かうことにした。青年は「俺はコロナって言ってない。家に行ってどうするんだ。」と聞くので、「本当に言ってないの?じゃあ誰が言ったの?」と聞くとそれには答えない。家は空き地の目の前だったのですぐに着いた。家の中から出てきたのは青年の姉だという女性だった。
私は空地で起こったことを説明して、「子供たちが私に対してbad-tamīzī(無分別、不品行、よくないことの意)をした。子供たちにちゃんと言い聞かせてやってください」と言った。するとそれに対して、青年が今度は「bad- tamīzīなんかしていない。コロナって言っただけだ。」と口をはさんでくる。
青年「子供たちなんだから仕方ないだろ。悪いこともいいこともわからないんだから。コロナって言ったくらいくらい許してやれよ。」
私「それはわかるし、今回のことは許すけど、でも子供が悪いことをしたら、ちゃんと叱らないとでしょ。」
青年「じゃあ叱れよ。子供のところへ行ってさ。」
そう言われて、私は青年の家から空地へ移動した。子供たち一人一人に対して、「こうすることはよくない。この先しないと言ってみなさい。ほら。」と促して、みんなから「言いません」という返事を得た。これで一件落着と思いきや、青年さらに口をはさむ。
青年「子供なんだから、この先も同じことを何度もするよ。」
私「じゃあどうしたらいいの?同じことをされたら?」
青年「そのたびに許してやりな。」
私「そのたびに叱るべきでしょ。そもそも子供だから何してもいいっていうのが間違ってる。じゃあ子供が人に死ねって言って、それも許されるの?」
青年「そんなの許されるわけないだろ。」
私「そうでしょ、そんなことあったら叱るべきでしょ。」
このやり取りをしているうちに、これまで静観していたSが、他の子供たちの親を連れて空地に来ていた。親たちは口々に「これはよくないことをした。」と言っていたので、事態は把握しているようだった。Sに促されて隣村を去ろうとすると、少年たちがまた何かを言った(私は聞き取れなかった)。それに対してSがすごい勢いで罵詈雑言をまくしたてた。村に帰る途中、私が「いいことしたでしょ」と言うとSはそれに同意して、「石をぶつけてやればよかったんだ」と言った。