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侮辱と心配―新型コロナ感染症がソロモン諸島国へもたらした変化

2020.09.11

著者:藤井 真一(国立民族学博物館、文化人類学、オセアニア地域研究)

大洋州 文化人類学オセアニア地域研究

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ソロモン諸島国の「民族紛争」
私は、1998年末から2003年7月にかけてソロモン諸島国で生じた「エスニック・テンション」と呼ばれる武力紛争の調査研究をしている。この紛争は、首都ホニアラが位置するガダルカナル島の人びとと、労働などを目的に首都やその近郊へ移住してきていたマライタ島出身者との間で争われたものだといわれてきた。

私の研究の目的は、この紛争の渦中でガダルカナル島北岸部の人びとがどのような生活を送っていたのかを明らかにすること、そして「民族紛争」後の社会を再構築するための紛争処理がどのように行なわれているのかを明らかにすることである。この目的のために、国家レベルで取り組まれてきた紛争処理に関する情報を収集するとともに、ガダルカナル島北岸部の集落で長期間の住み込み調査を行ない、言語習得や伝統的な紛争処理に関する民族誌資料を収集してきた。

ガダルカナル島北岸部で私が身を寄せている家の様子。
左手前に見えるのは、私が村へ招いた日本人学生のために新築した水浴び小屋。
(2019年9月6日藤井真一撮影)

2020年2月からの調査では、ガダルカナル島北岸部での補足調査に加えて、ガダルカナル島の北東に浮かぶマライタ島での調査を計画していた。マライタ島では、中西部の人工島で漁撈や貝貨製作によって生計を立てているランガランガの人びとについて調査を行なう予定であった。

マライタ島中西部ランガランガの人工島のひとつ。(2020年2月22日藤井真一撮影)

ソロモン諸島の一部の地域では、もめごとの処理や結婚といった儀礼の場面で、ビーズ状に加工した貝殻をつなぎ合わせた貝貨のやりとりがみられる。貝貨のもととなる貝ビーズをソロモン諸島国内で生産している人びとは、国内に100近く存在する言語集団のうち、上述のランガランガの人びとだけである。約10年にわたってソロモン諸島における紛争処理の研究を続けてきた私は、紛争処理の場面でやり取りされる貝貨の現状を調査しようと考えていた。

貝殻をビーズ状に加工する作業の様子。
細かく砕いてからハンドドリルで穴を空け、紐に通す。
(2020年2月25日藤井真一撮影)
ビーズ状に加工された貝殻を紐に通した貝貨。
各種もめごとの処理や結婚などの儀礼的場面でやり取りされる。
写真は、ガダルカナル島北岸部の言語集団の間で用いられる2連の貝貨「コガナ」。
(2020年2月17日藤井真一撮影)
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