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ホテルには私たち二人のほかに日本人が数人宿泊していて、話をきくとJICA関係の方々ということだった。JICAの方でも滞在者に帰国指示が出たらしく、私が話をきいた方によると、JICA関連でタンザニアに残っているほぼ最後の集団だということだった。
この日、タンザニア大統領から、新型コロナウイルス対策措置についての発表が行われ、タンザニア入国者に14日間の隔離と不要不急の渡航自粛命令が出された。アフリカでは国境封鎖という措置をとっていた国もいくつかあったが、タンザニアの対策はそこまで厳しいものではなく、帰国が目前だった私としては無事帰国できそうで一安心した。実は、Nさんの乗る予定だったエミレーツ航空の便は直前で欠航やスケジュールの変更が相次いで大変だったのだが、私の乗るカタール便は予定通り運航していた。
この時点でのタンザニアの国内感染者は12名となっていた。
3月23日:日本へ
最後に、タンザニアへの渡航や滞在の際にお世話になっている現地旅行会社のオフィスに挨拶に行き、夕方の便でタンザニアを出た。最近新しくできたターミナルを初めて利用したので、通常の様子を知らないのだが、空港のカウンターは私の乗るカタール航空しか開いておらず、空港内は閑散としていた。ただ、ここでもマスクをしている人はほとんどおらず、新型コロナウイルスに対する危機感はそこまで感じられなかった。
ここからカタールで乗り継いで24日に成田空港へと帰ってきたが、特に検疫での厳しいチェックもなく普通に帰国した。ヨーロッパ帰りの人は申告するようにと掲示があったが、アフリカ帰りは素通りだった。アフリカではまだ感染が拡大していなかったからだろう。
最後に
今回、私は新型コロナウイルスの影響で調査を中止し、急遽帰国することとなった。私の帰国のために迅速に対応して下さった方々のお陰で、特に大きな問題もなくスムーズに帰国することができた。今振り返れば、もし数日行動が遅ければ簡単には帰国できない事態に陥っていたかもしれない。他国の国境封鎖や、国際線の運航停止など、数日のうちにみるみる状況が変わっていった。しかし、帰国を決定した時点でも、実は私は世界がどういう状況なのかよくわかっていなかった。フィールドワーク中は、必要最低限の情報は入るようにはしているものの、それでも日本にいる時に比べれば情報は限られる。このため、世間の人々がどのように新型コロナを捉えているかといったことを肌で感じることは難しい。
さらに出国時の町の様子もそんなに変わりはなかったし、新型コロナウイルスに対する危機感もあまり感じられなかった。そのため、私は日本に帰ってきて、様々なニュースやネット情報を見るまで事態の深刻さをそこまで感じておらず、よくわからないままにとりあえず急いで帰国したというのが正直なところだ。
2020年7月31日現在、既にタンザニア政府は国際旅客便の受け入れを再開している。しかし、調査地付近の村では医療体制が整っていないため、もし感染が広まれば死者がたくさん出る可能性がある。未だ情報が錯綜している新型コロナウイルスであるが、とにかく向こうで感染が拡大しないこと、調査中お世話になっている調査助手や現地の人々とまた元気に再会できることを切に願う。
また、タンザニアには国立公園が多くあり、野生動物を見に行くサファリツアーはタンザニア観光の目玉の一つである。マハレにも、普段はチンパンジーをはじめとした珍しい動物たちを見るために様々な観光客が訪れていた。新型コロナウイルスの動物への感染の可能性についてはまだよくわかっていないが、人から野生動物への感染についても今後気を付けていく必要があるだろう。